激しい雨音に心が安らいだ。窓を揺らす強烈な光と地響きにこの世の終わりを感じて、私はほっと一息つく。寝る前に珈琲を飲んだからじゃない。私は、私に集中することが出来て嬉しかった。でたらめな結び方をした布団の中で体を畳む。
枕の位置に私は細かい。布団がどれだけ滅茶苦茶でもどうでもいいのに、これだけは譲れなかった。それすらもどうでも良くなったのは、どうやっても眠れなくなったのはいつからだろう。何がきっかけだろう。
雨音が弱くなる。
やめてくれ。止まらないで。耳に打ち付け続けてほしい。ずっと暗いままでいてほしい。
心のざわめきは、雨脚が弱くなるほど私の中で振れ幅が大きくなる。
雷が鳴った。
体だけが大きくなって、私はまだ自分の汚い城から出ることが出来ない。この埃とカビに塗れた小さな領地が、居心地よくて疎ましい。しかし、この家がなくなってしまったら、私は一体どこに行けばいいのだろう。
「どこにでも行ける」
そんなありきたりな歌詞に騙されない。騙されたいのに、私の中の私が囁くのだ。夢を見るなと、お前には無理だと、そんな自分を忘れるために枕の位置を変える。
雨がまた降り始める。このままでいい。このままでいいのか。
皆どこにいったのだろう。何があんなに好きだったのだろう。なにに夢中になれたのだろう。
考えてももう、あの時のように夢は見れなくなった。見たくない。多くの人が向かう道から、私は段々と逸れている気がした。
戻る道はどっちだ。私は何故その道に行けそうだったのに、止めてしまったのだろう。
雨が窓を打ち付ける。賛歌のように。
ドンドン、ドンドンと。
鼓動のようになっている。私は、重くなってく瞼を閉じ、ようやく意識を手放した。
時刻は朝の四時である。
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